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2011年05月11日

「不動産ショック」日経ビジネス2011年5月9日号

日経ビジネスでは、ゼネコンの特集が組まれることはあっても、不動産というくくりで特集されることはあまりないように思う。
その日経ビジネスが、他の週刊経済誌(東洋経済やダイヤモンドやエコノミスト)に先駆けて「不動産ショック」と題した特集を組むというのは、今の状況の深刻さを示しているのかもしれない。
港区について特に言及している箇所は見当たらなかったが、内容も興味深いものだった。

特集は全部で22ページ。
前半は住宅に関してで、後半8ページがオフィスについて。
その特集最初のページには、こんな見出しが並んでいる。

「『もう住みたくない』。湾岸の高層マンションから離れていく人々」
「回復の兆しが見えてきた不動産は、再び冬の時代に入る。」

そしてその見出しの右側には、不動産関係者へのアンケート結果が円グラフで表示されており、震災が不動産市場に与える影響の大きさについて「非常に深刻」が28.4%、「深刻」が26.8%、「やや深刻」が34.9%で、全体の9割以上の人が「やや深刻」以上となっている。

ページをめくると「プロローグ」として「さらば湾岸、超高層 −ある住人の告白」という記事があり、晴海の高層マンション34階、78uを6,800万円で購入した男性のコメントとして「全く、なぜこのマンションを購入してしまったんだろう」「家族のためのも、一刻も早くここを離れたい」「その日(3/11)から妻の様子が少しずつおかしくなっていきました」「ダメを押したのが、停電の不安」「エレベーターが使えないとなると、34階まで階段(中略)しかも子供を抱えながら」「高層階では、住戸の向きに関係なく日光が入ってきます。サウナのような状態になるのは目に見えています」といったことが書かれている。



その右側のページには、「家探し5つの新常識」という見出し。
その「新常識」というのは次の5つ。

1. 何よりも耐震力を重視
2. マンションは高層よりも低層
3. 湾岸の埋立地より台地
4. 「オール電化」は様子見
5. 職場から歩いて帰れる場所に

確かに今ではこれらが常識となっているように思う。
オール電化だけはなぜか「様子見」と控えめだが、ガスでも停電したら(自家発電装置などがない限り)結局コンロの火はつかず、風呂の湯張りもできず、床暖房もつかないだろうから、オール電化かどうかは大した違いではないということなのかもしれない。

記事を読み進めていくと、湾岸新築マンションのモデルルームは週末でも閑散としている、浦安では土地の担保価値が3〜4割は下がる(メガバンク行員のコメント)、戸建ても状況は厳しい、沖縄では売れ残っていた分譲マンションが地震後すぐ売れ、都心の自営業者や医師が物件を見ずに買ったりしている、等と書かれている。

マンションについては埋め立て地についての記述ばかりで、台地に建つマンションの売れ行きがどうなのかは書かれていないが、原発問題の先行きが不透明であることから、不動産を保有すること自体がリスクと考え、首都圏では所有しているマンションや戸建てを手放す動きも出始めたともあり、湾岸地域に限らず全体として価格は下落するとも考えられる。

そもそも日本は人口が減少し始めている一方で、都心部では海の埋め立てで土地が生産されたり、容積率緩和で大量の住戸が作られ、長期的には価格が下落すると以前からリクルート創業者の江副氏が言っていた(『不動産は値下がりする!』)ところに、この大地震・原発問題が出てきたわけで、ハイパーインフレでも起きない限り、不動産の値下がりは確実だと思う。
従って、自分もいずれはもう少し広いマンションを買いたいと思っているが、しばらく様子を見ようと考えている(もう何年も様子見を続けている気がするが)。

とは言っても、どこのマンションを買うのが良いかは、常に考え続けていなければいけないし、掘り出し物が出るかもしれないから場所を絞って注目していきたい。
今までは港区内で、埋め立て地ではなく、住みやすい場所という程度に考えていたが、本当にそれで良いのかと、少し揺らいでもいる。

そんな中、今回の日経ビジネス記事の中に「東京都内で安全な場所は・・・」という見出しの囲み記事があった。
東京都都市整備局が発表している「地震に関する地域危険度測定調査」という調査結果を元にした記事で、安全な地域ベスト20と、危険な地域ベスト20が載っている。
このランキングには港区は入っておらず、安全な地域は東京都西部中心で、危険な地域は足立区南部、墨田区、荒川区が目立つ。

港区はどうなのかと思い、都市整備局のホームページ(都内の全地域について危険度が載っている)を見ると、港区はほとんどの場所で建物倒壊危険度、火災危険度ともにランク1か2(最も安全が1で、最も危険が5)。
建物倒壊危険度が4になっているのは白金3丁目と新橋4丁目だけ。
白金台や高輪など、なかなかいいなと思っていた場所は危険度1か2なので安心した。

意外なことに、海岸、港南、芝浦といった埋め立て地は、建物倒壊危険度がすべて1で、最も安全ということになっている。
危険度の算定基準を見てみると、地盤だけで算定しているのではなく、その地域の建物の新しさや構造などの「建物の特性」も考慮しているようだ。
そのため、埋め立て地でも、新しい建物ばかりの地域は、倒壊危険度が低くなっているものと思われる。
この調査は平成20年2月に公表されたものなので、ぜひ今回の大地震後の状況を調査して、早期に公表して欲しい。

今回の日経ビジネスの特集の中には、「新築依存に決別する時」という記事もある。
これには自分も同感で、スクラップアンドビルドではなく、今の住戸をできるだけ長く使えるよう、修繕の技術を発展させて欲しい。
そして、耐震性についてはいくらオープンルームなどで現物を見ても素人ではまったく分からないので、耐震診断を各マンションが受け、購入希望者にその結果が分かるように、行政から後押しして欲しい。



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posted by さるうさぎ at 20:54 | Comment(2) | TrackBack(0) | 雑誌記事・その他 |edit
この記事へのコメント
こんばんは。

今回の震災をきっかけに、マンションを含めた資産すべてを日本で所有することに大きな危機感を覚えた一人です。外国人/外国企業が日本の地震大国/原発大国というカントリーリスクを強く意識してしまった以上、今後は超高額マンションが全く動かなくなるのではないかという気もします。

また、地震保険でカバーできる金額が気休めにしかならない現実も知り、かつ日本がこの次の大地震で絶対にデフォルトを起こさないとは思えなくなってきました。日本円が紙切れになる事態は、もはや絵空事ではないと強く思っています。

親しい友人は子どもが小さかったこともあり、すぐに都心の自宅マンション(低層)を売り、同じ区の外国人向け高級賃貸マンション(低層)に引っ越し、売った資金の多くを海外口座に移しました。今借り手市場のようで、200平米以上あるのに家賃は50万以下ときいて私も心が揺れ動いています。

とはいえ、今住んでいるマンションにも街にも愛着が強く、メンタリティはそうそう簡単にシフトできないのが現状です。

さるうさぎ様は、この大震災をきっかけに、東京にマンション/資産を保有するリスクについてお考えに影響はありましたでしょうか?
Posted by もも at 2011年05月24日 22:19
ももさん、こんばんは。コメントありがとうございます。

私も、マンションを所有するリスクは震災前より高まったと考えています。
ただ、それはデフォルトの危険性が高まったからということではなく、特に原発リスクを考えた結果です。

確かに、日本がデフォルトになる可能性は今回の震災で高まったかもしれませんが、デフォルトになったとしても、その後も日本に住み続けるのであれば、逆に不動産を持っていたほうが良いのかなと思っています。
少なくとも住む場所は確保できるし、マンションを2戸持っていれば、片方を貸して外貨を得ることもできるだろうし・・・。
住宅ローンも固定金利にしておけば、もしかしたらインフレで返済しやすくなるかもしれない、なんて思ったりもします。

もちろん、不動産以外の金融資産については、円建てのものばかりだと危ないので、外貨もある程度持たねばとは思っています。
まだ実行には移せていませんが・・・。

それにしても、外国人向けの高級賃貸で、200u以上が賃料50万円以下とはすごいですね。
リーマンショック直後とかも高級賃貸は不振で、上顧客はお試しのフリーレントをすすめられ、それを何カ所かで繰り返してしばらくタダで住んでいる、なんて話も聞いたことがありますが、今はその時の比ではないほど、外国人が大きく減っているんでしょうね。
貴重な情報をありがとうございます。
Posted by さるうさぎ at 2011年05月25日 22:30
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