■■■ブログ内検索■■■

2013年06月06日

「マンション時限爆弾 老朽化にどう対応する」週刊東洋経済2013年6月8日号

つい先月も2013年5月11日号でマンションを特集していた週刊東洋経済が、今度は2013年6月8日号でマンションの修繕、維持管理、建替えといった内容に特化した特集を組んでいた。
マンション探しをする上でも、新築なら買った後の維持管理がスムーズに行くか、中古なら適切な修繕がなされ、計画もきちんとしているかというのは重要なポイント。
今自分が住んでいるマンションの維持管理をどうするか(区分所有者の一人として何ができるか)という観点でも非常に興味深い記事だった。
また、個人的には以前からタワーマンションの持続性に疑問を感じていたが、その点についても一つの章として取り上げていており、好感を持った。

 

今回の特集は次の4つのパートから構成されている。

1. ほぼムリな建て替え
2. 資産価値を決める大規模修繕
3. 揺れる管理組合
4. とびきりの難物タワーマンション

パート1では、建て替えがいかに困難かということが書かれている。
具体例として、建て替えを検討している川口市のマンション(5階建て、77戸)が挙げられているが、容積率、日影規制を考慮すると建て替えで戸数を増やすことはできず、設計士に見積もりを取ったところ解体費が1億円、新築工事費が坪単価55万円で14億円、設計費用がその3%で4,200万円、さらに全世帯の引っ越し費用など含めると総額約16億円、1戸あたりで2,000万円になるとのこと。
実際に建替えるには、決議で5分の4以上の合意が必要となり、極めてハードルが高いことが分かる。

また、旭化成不動産レジデンス・マンション建替え研究所の人の「集合住宅の建て替えには、容積率の余剰と、マンションの市場性という二つの要素が欠かせない」というコメントが紹介されているが、実際にはその2つを満たすマンションはそうそうないようだ。
特に、容積率をいかに上げるかというのがポイントのようで、敷地内の道路を移動して事故を減らすことで地域に貢献する、ということで容積率アップを認めてもらったアトラス調布と、プラウドタワー白金台のことが書かれている。

プラウドタワー白金台は、周辺住民が使える空地や通路を設けることで容積率が緩和される総合設計制度を利用して建替えるもので、元々白金台マンションで建て替えを検討していたところ、単体ではペンシルマンションのようになってしまうということで、隣のクラウン白金台と共同で建替える方向で話が進んだというもの。
これも順風満帆ではなく、元々は建て替え中の仮住まい費用も含めて持ちだしゼロで実現できる予定だったのが、リーマンショックの発生で住民負担が大きく膨らむ可能性が出て、1年近く建て替え計画がストップしたらしい。
設計会社の社長夫人が各戸を回って説得し、最終的には仮住まい費用を全額住民が負担することで2010年に建て替え決議が成立したとのこと。
記事を読むだけでも、相当大変そうだということが実感できる。

パート2では、大規模修繕でどういった箇所を修繕する必要があるのか、外壁工事はいくらぐらいかかるか、といったことが書かれていて、それも非常に興味深い内容だったが、1990年以降のマンションは給排水管が金属製から塩ビ製へ変わっていて、給排水管の修繕間隔がかなり長くなっているはず、という全く知らないことが書かれていて大変参考になった。
自分のマンションの長期修繕計画を見返してみても、給排水管の交換はかなり高額な費用で見積もられていて、それがいつ発生するかにより、毎月の修繕積立金を値上げする必要があるかどうかなど変わってくる。
塩ビ製だとどのくらい交換しなくて済むのか、改めて少し調べてみたい。

また、長期修繕計画の中で、建て替えではなく、築後60年に建物を解体して更地にしてしまうことを盛り込んでいるマンションも紹介されている。
築後60年で更地にするとなると、定期借地権マンションと同じのようにも見えてしまうが、更地にした後には建て替えや、土地売却という選択肢が残る。
どちらにするかはその当時の状況に応じて決めることにし、まず解体時期だけを先に決め、それに向け解体費用などを積み立てるというのは、実際に建物解体の決議で合意できるかといった課題はありそうだけど、なるほどと思わされた。

パート3では、管理不全となったマンションの例が載っている。
中には管理組合の理事長が月20万円の役職手当をもらっているケースや、管理人が共用部の電気代を水増し申告して差額を着服しているケースなどもあるという。
スラム化したマンションについても書かれているが、これは決して特異なケースではなく、港区内でも外壁はぼろぼろで、カーテンの掛かっている部屋がほとんどなく、荒れ果てたと言っては失礼かもしれないがそういう分譲マンションがある。
住民の高齢化や、管理組合への無関心化で管理組合役員のなり手不足が続くと、総会の見送り、滞納の放置、修繕の遅れなどが出始め、それが続くと物件の人気が落ちて空室が増え、最悪の場合にはスラムのようになってしまうようだ。
自分のマンションでも、管理に関心を持っている人は全世帯の1/4ぐらいしかいないように思う。
今のマンションの区分所有者である限り、管理面には関心を持ち、積極的に関与しなければと感じた。

最後のパート4がもっとも興味深い内容だった。
「タワマンは難題山積みだ」と題された記事は、冒頭から「工事完了まで3年弱、総額6億円弱」という数字が示され、どこかのマンションの建て替え費用かと思いながら続きを読むと、1990年に一世を風靡したあるタワーマンションでの第1回大規模修繕工事の実際の工期と費用であるとのこと。
工事費用としては極めて高額に感じるが、住民は富裕層が多く修繕積立金も豊富で、トラブルは生じなかったとのこと。
これとて今後の大規模修繕や、もっと老朽化したときの備えは大丈夫なのかと疑問に思うが、それ以外の一般的なタワーマンションだと、高層階は裕福な人でも、低層階はそうではなく、その間には別世界と称されるほどの断絶があると書かれている。

そして、タワーマンション住民の実態として4組の住民インタビューのような内容が掲載されているが、最初に取り上げられているのが港区・芝浦のタワーマンションに住むAさん夫婦。
総戸数が約1100戸、分譲時の抽選倍率が14倍、専有面積100uで分譲価格1億円程度と書かれているので、芝浦アイランドであることは間違いなく、総戸数から恐らくケープタワーだと思われる。
よくこんなに色々記者に話したものだと思うが、「住んでいるとすごく揺れるんです。震度3でも5ぐらいに感じるほど。東日本大震災のときも、帰ったら引き戸が外れていました」とか、「妻は『日頃から微妙に揺れている』と不安げ」と書かれている。
ただし、芝浦は江戸時代からの埋め立て地なので地盤は強固で、液状化の心配はないと説明を受けたため、その点は安心だとも(実際のところどうなのかは分からないが、港区の液状化危険度マップを見ると安心できるエリアではない)。

それよりも、風に悩まされているそうで、「真下に首都高速があって排ガスがひどいのと強風のせいで、窓ガラスがすぐ汚れる」らしい。
その窓ガラスは2ヶ月に一度ゴンドラで清掃してもらっているそうで、それで修繕費は大丈夫なのかと思っていたら、「修繕費は12億円近く貯まっている」とのこと。
総戸数1100戸ともなるとまさに桁違いだと実感した。

高層階と低層階の格差については、
「管理組合が取るアンケートにネガティブな意見を書き込む人はいっぱいいますよ。クリスマスの時期、エントランスにツリーを飾るのは無駄だとか、BGMはいらないだとかね。ローンでカツカツの人は修繕積立金が上がるのが不安でケチりたいのだろうけど(中略)"野党"の言うことなんていちいち聞いてられませんよね」
自分たち35階以上の住民は、地震などいざというときは屋上に上がり、ヘリで救出してもらえる予定。でも34階以下の人は、階段で1階まで降りるしかないみたい
といったAさんのコメントが紹介されている。

そのほか、「平均倍率14倍のウチのマンションをなぜか30戸も買った業者がいた」そうで、その業者が倒産したら修繕積立金の取りはぐれが起きないとも限らない、ということが書かれている。
読めば読むほど、あまりあまり良くない印象を持ってしまうが、これはもしかしたらそういうコメントばかり記者が拾って記事にしたのかもしれない。
その他のタワーマンション住民の例でも、地震では相当揺れたとか、地震でパイプの水漏れ・外壁のひび・高層階の雨漏りが発生したり玄関たたきにヒビが入ったりといったことが紹介されている。

さらに特集最終ページには、最後の難問としてタワーマンションの解体費用について言及しているが、「天文学的な数字になるのでは」というゼネコン関係者のコメントが紹介されているのみ。
マンション周辺にまったく何もないのであれば、一気に爆破させて解体という方法もありかもしれないが、周辺に住宅や商業施設がないタワーマンションなどないだろうから、そうもいかない。
実際のところどのくらいかかるのか、数億なのか十数億なのか数十億なのかといったレベルだけでも紹介して欲しかった。

タワーマンションは、解体でさえいくらになるか分からないのだとすると、建て替えなど不可能なのではないだろうか。
それに、今から30年ぐらい経てば、それなりに年季の入ったタワーマンションがあちこちに存在することになるが、中には修繕費が足りなかったり管理組合が機能せず、荒れてくるものもあるのではないか。
今は眺望などに惹かれて居住用に買う人だけでなく、投資目的や相続対策で買う人も大勢いて値崩れもしていないが、どこかで一気に来るのではという気がする。

全体的に、読んでいるとマンションの先行きに少し不安を感じてしまう面もあるが、マンションの質を維持・向上できるかは、結局は住民次第ということだと思う。
自分だけではどうにもならない部分もあるが、住んでいるマンションの管理に関心を持ち続け、住民とのコミュニケーションを少しでも取るように心がけたい。

 
saru_usagiをフォローしましょう
posted by さるうさぎ at 00:25 | Comment(7) | TrackBack(0) | 雑誌記事・その他 |edit
この記事へのコメント
こんばんは。興味深い記事ですね。
空家率の上昇、人口減、低所得者層の拡大を考えると
現状の供給が続くとは思えません。

新宿、豊洲などで1000戸以上のタワーが建築中ですが、巨大すぎて末恐ろしいものがあります。
Posted by おぐら at 2013年06月07日 00:45
おぐらさん、こんにちは。
コメントありがとうございます。

おっしゃるとおりだと私も思います。
1,000戸単位のタワーマンションは、将来どうなっていくんでしょうね。
これ以上そんな巨大なマンションを建てなくていいのではと思いますが・・・。
Posted by さるうさぎ at 2013年06月08日 19:53
Posted by ぽん太 at 2013年06月09日 01:39
いつも興味深く拝見しています。
私は一年前から物件を探していますが、タワー→低層小規模→建て売り戸建て→注文住宅と考えが定まらずに変遷しています。タワーについては眺望とスケールメリット以外何の魅力も感じません。建て替えは無理ですし、将来のことをどう考えて皆さん購入されるのでしょうか?
Posted by ぽん太 at 2013年06月09日 01:44
ぽん太さん、初めまして。
コメントありがとうございます。

確かに、タワーは眺望とスケールメリット以外に魅力を感じないですよね。
将来については、きっと何とかなるだろうと思っているか、どこかでうまく売り抜けようと思っているか、のどちらかかなと推測しますが、どうなんでしょうね。

物件によっては自己居住用途よりも、相続対策で購入して賃貸に出している人の方がずっと多いのではとも思います。
相当節税になるみたいですからね・・・。
Posted by さるうさぎ at 2013年06月09日 23:32
やっぱり、赤坂8や元麻布2あたりの
「低層」に住みたいね…(夢)
Posted by 酔人 at 2014年08月25日 17:30
酔人さん、こんにちは。
コメントありがとうございます。

いや〜本当に、そういうところの低層に住めるなら住んでみたいですね・・・。
特に元麻布2丁目、有栖川公園も近くていいなあ、と思いますね。
Posted by さるうさぎ at 2014年08月27日 23:05
コメントを書く
お名前:

メールアドレス:

ホームページアドレス:

コメント:


この記事へのトラックバック
×

この広告は90日以上新しい記事の投稿がないブログに表示されております。