見出しは「不動産動き出す!」で、見出しに続けて「アベノミクス効果から不動産市場の回復が一段と鮮明になっている。『割安感』から海外投資マネーが日本の不動産を物色する動きも出て来た」と書かれている。
前回の同誌不動産特集号(2013年5月11日号)は、「不動産2極化時代」という見出しで、続けて書かれているのは「『異次元緩和』で不動産市場の回復ムードが高まってきた。しかし、水面下では優勝劣敗の動きが鮮明になりつつある」という内容。
8ヶ月しか経っていないが明らかにトーンが変わっている。
記事はオフィスなど主に事業用不動産について記載したPart1と、マンションを特集したPart2に分かれている。
Part2は「どうなるマンション市場 建築コスト高が直撃 販売価格はまだ上がる」と大きな見出しで始まっている。
最近は建築費用、それも資材だけでなく人件費が上昇しているという話を人からも聞くし、新聞などで目にすることも増えているが、今回の記事でも同じようなことが書かれている。
「早ければ4月以降、コスト上昇分が価格に転嫁された物件の販売が始まる見通し」だそうで、今でも十分高額な水準なのに、さらに価格が上がるのであれば、よほど立地などで魅力がない限り、新築を選ぶ理由はないのではと思ってしまう。
少し気になったのは特集記事の後半。
「中古マンション価格 首都圏関西圏 500駅徹底調査」という見出しで、ランキングや駅別の数字が載っている。
その中に掲載されているマンション賃料ランキング首都圏上位30駅で、港区内では1位に六本木、2位に汐留、3位赤坂と上位を独占している。
4位は渋谷だが5位広尾、6位麻布十番、12位高輪台、15位白金台、18位白金高輪、29位品川と30位以内にも多く入っている。
記事本文には、「賃料水準は、そのエリアでの居住ポテンシャルを示すものとして活用されるべき指標」と書かれているが、単純にランキング化してしまうと、必ずしも居住性の高さを示したランキングにはならないと感じた。
例えば2位が汐留になっているが、汐留が首都圏で2番目に居住性の高いエリアだとは思えない。
個人的には広尾や白金台の方が(交通面、買い物面、緑の多さ、静かさなど)総合的に見て居住性は高いと思う。
また、高輪台が白金台や白金高輪より上位に来ているが、白金台や白金高輪の方が居住性は高いのではないか。
(高輪台駅は都営浅草線しか通っておらず、駅付近に商店も少ないため)
30年以上前から分譲マンションが存在するような地域は、古い分譲マンションの賃料が相対的に低く、その駅の平均賃料を押し下げて、ランキングでの順位も押し下げているのだと思う。
汐留のように新しいマンションばかりの駅は上位に来やすいし、高輪台もグレードの高いタワーマンションである高輪ザ・レジデンスや、駅直結築浅タワーマンションのザ・ヒルトップタワー高輪台が戸数も多く、賃料も高めで平均を押し上げているのではないか。
ランキングにするなら、築年数を限定する(それも築浅ではなく、築後10〜20年とか、20〜30年とか)などしたほうがより居住性を示した指標になりそうな気がする。
賃料ランキングの隣には、首都圏の中古/新築マンションランキングもある。
これは、2001年12月から2013年11月に分譲されたマンションのうち2011年12月から2013年11月の間に売買された販売価格(70u換算)を、2011年12月から2013年11月に分譲された新築マンション販売価格(70u換算)で割った比率が高いもののランキング。
この値が100%なら新築と中古が同じ価格で、100%を超えれば中古のほうが新築より高く売買されている、ということらしい。
ランキングでは品川が5位になっているが、品川は高輪口か港南口かで立地がまったく異なり、10年前まで遡れば高台で地盤もよく、閑静な住宅街の高輪側マンションも分譲されていたが、今分譲されているのは埋立地の港南側が多い。
中古では高台にある高輪4丁目のマンションも販売されているだろうから、中古のほうが高くなるのは当然だろう。
ランキングの1位は神保町だが、これも特殊要因(恐らく2003年築の東京パークタワー)が中古価格を押し上げていると思われる。
2位の汐留も、大規模タワー物件の東京ツインパークスが中古価格を押し上げていて、新築ではそれに匹敵するような物件が出ていないだけだと思う。
ランキングの中には、純粋に中古価格が下がりにくい駅もあるのだろうけれど、素人目にはどの駅がそうで、どの駅が特殊要因によるものなのかさっぱりわからない。
記事では、「日本人は入り口(=不動産購入時)では(中略)熟慮を重ねて購入に至るという慎重さを有する反面、出口(=不動産売却時)の価格がいくらになるかということには案外無頓着である」と書かれているが、このランキングの作り方自体、出口に無頓着なのではと思ってしまう。
中古での価格が分譲時より上回っているマンション自体は、多くの駅に存在しているはず。
その上位のマンション名を公開するとかのほうが実用的だと思うが、難しいのだろうか。
(下位を公開せず上位だけ掲載するのであれば問題ないような気もするが・・・)
前回の同誌記事でもこのランキングはあり、その時は1位が明治神宮前、2位が麻布十番、3位品川、4位六本木、5位立会川、となっている。
今回1位の神保町はおろか、2位の汐留も前回のランキングには入っていない。
前回の集計期間(2011年4月から2013年3月)に新築分譲がその駅ではなかったのだろうが、たった8ヶ月の差でこれだけ結果が激変するランキングに意味があるのか、とやはり少し疑問に感じる。
同じマンション同士で分譲時と中古売買時の価格を比較したランキングにするか、単純に平均中古売買価格でのランキングにした方が意味のあるものになる気がする。
それにしてもマンション価格はこの先どうなるのだろうか。
新聞・雑誌では新築マンション販売は好調という報道が多い。
株価や景気なども上昇傾向という見通しが多いように感じる。
新築マンション価格も資材や人件費の上昇でますます上がりそう。
しかし、消費税増税で出費は増え、給料が増えなければ高額な新築マンションは買えなくなる。
そう遠くないうちにマンション価格も下落するのではないか。
(円安で外国人はマンションを買いやすくなっているのかもしれないが・・・)
いずれにしても、この時期に新築のマンションを買おうという気は全然しない。
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